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2012/12/11

身体図式と身体イメージ

  最近は身体イメージや身体図式についての論文を読むことが多く、普段の子どもの臨床でも身体イメージや身体図式に問題があるのではないか?と思われる症例が多数います。
 
   以前から身体図式と身体イメージは、意識的であるか否かで区別されることが多いのですが、研究者やその論文によって区別があいまいであったり、異なる定義を用いていたり、なかには特に区別することなく身体イメージとしてひっくるめて使っていたり、はっきりと区別されていないのが現状です。
 
  そこで今回は、身体図式や身体イメージについて論じるときによく引用される論文について紹介していきたいと思います。
 
  今回は、Schwoebel&Coslett(2005) in Journal of Cognitive Neuroscienceの研究です。
 
   論文のまずはじめに、筆者らは身体表象について以下の3つに分類、整理しています。
 
① Body Schema(身体図式) : On-line Sensorymotor Representation(オンラインの感覚運動表象)
② Body Structural Description(身体の構造的描写): A Topological Map of the Body(身体の空間的な地図)
③ Body Image(身体イメージ): Semantic and Lexical Representations of the Body(身体の意味的・言語的表象)
 
以下、これらについて説明します。
① Body Schema: On-line Sensorymotor Representation
   これは頭頂葉の5野を中心とした身体の空間的な位置関係の表象です。失行症についてもBuxbaum,Giovannetti,& Libon(2000)の症例B.G.をとりあげ、身体図式の障害の可能性を指摘。
 
   Lackner(1988)で紹介された上腕二頭筋腱への振動刺激によってその手が触れている部位の身体表象が変化すること(いわゆるピノキオ錯覚)をとりあげ、身体部位の位置関係のオンライン表象を示唆。
 
   Parsonsにはじめる手のメンタルローテーション課題による運動イメージについてとりあげ、その反応時間が運動障害の程度と相関することから、手の動きの表象はダイナミックな手の位置の内的表象によっており、遠心性コピー情報と同じく固有受容感覚から得られる、すなわちそれを支えているのは身体図式であると主張。
 
  Schwoebel, Buxbaum, & Coslett(2004)の脳卒中による左半球損傷症例の模倣障害を手のメンタルローテーション課題の成績によって予測できることを紹介している。
  また、その根拠として手のメンタルローテーション課題時には、運動関連領野だけでなく上頭頂小葉や下頭頂小葉も賦活することをあげている。
 
   最後にSirigu et al.(1995, 1996) をとりあげ、頭頂葉の損傷が運動のシミュレーションに影響を与えることから、実際の動きや運動イメージには身体図式が必要であることを述べている。そして身体図式の神経基盤として後部頭頂葉の重要性を述べている。
 
 
②Body Structural Description: A Topological Map of the Body
  これはPick(1922)によってはじめて報告された、指示された身体部位を指さすことができない症例、すなわち身体部位失認(autotopagnosia)が代表的なものとして取り上げられています。これは人間の身体の構造的な表象が選択的に障害されているとされています。
 
  これは多様な感覚・運動入力によって得られる身体図式とは対照的に、基本的には視覚入力によって得られるものとされています。
 
  Buxbaum & Coslett(2001)で報告された症例G.L.は指示された自分や他者の身体部位を指さすことができないにもかかわらず、動物や物体の部位を指さすことはできたとされています。そしてG.L.はオンラインの感覚運動表象には問題がないことが確認されています。
 
 
③ Body Image: Semantic and Lexical Representations of the Body
  これは身体部位の名前やその身体部位の機能についての表象です。
先ほどの身体部位失認の患者はこの表象は保たれてることがわかっています。
  この選択的な障害例としてSuzuki, Yamadori, & Fujii(1997)があげられています。この症例では自分の身体部位を指さすことや言葉の理解は保たれているが、身体部位の名称の理解が障害されていました。
 
 
   Schwoebelらは、これら3つの分類に従い、この3つがそれぞれ独立したものであることを調べるために、脳損傷者を対象にそれぞれを評価してその関連性を調べました。
 
   対象は70名の片側脳損傷患者(うち左損傷が45名)。コントロールとして年齢をマッチングさせた18名の健常者を同様に調べた。
   評価はすべて答えるのに言語を必要としない身体画像を用いた課題であった。
 
*身体図式の評価
Hand Imagery/Action Task:
  もともとSirigu et al.(1996)によって使われたものと同様で、手指の分離した動きを調べるもので、片麻痺患者では健側の手で行った。ひとつの条件では可能な限り正確に速く5回運動するのをイメージしてもらった。次の条件では同じ動きを実際に実施してもらった。そしてそのときの所要時間を測定し、その一致の割合を算出した。
Hand Laterality Task:
  これは手のメンタルローテーション課題である。提示された手が右手なのか左手なのかを答えてもらった。
 
*Body Structural Descriptionの評価
Localization of Isolated Body Parts:
  24の身体部位の画像が提示され、自分の同じ身体部位を指さす課題。
Localization of Tactile Input:
  閉眼して座り、検査者によって触れられた身体部位について、目の前のマネキンの一致する場所を指し示す。
Matching Body Parts by Location:
  ターゲットとなる身体部位が視覚的に提示され、それと最も近い身体部位を3つの画像の中から選ぶ。
 
*Body Imageの評価
Matching Body Parts by Function:
  提示された身体部位の画像が、機能という観点から最も近い身体部位を3つの画像から選択する課題。たとえば、肘に対して膝を選択するなど。
Matching of Body Parts to Clothing and Objects:
  衣服のアイテムが提示され、そのアイテムと最も関係する身体部位を4つの身体部位の中から選択する課題。
 

【結果】

〔課題間の関係〕

患者の評価データについて主成分分析を行なったところ、4成分が抽出された。その結果がTable1である。統計のことはよくわからないのですが、それぞれの評価がある程度独立しているのがわかります。


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身体図式の評価では運動実行/イメージ課題と手のメンタルローテーション課題も独立した評価となっています(図1のグラフ参照)。


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メンタルローテーション課題で異常があった16名中8名が手の運動イメージ課題では問題がなく、また手の運動イメージ課題で問題があった16名中8名がメンタルローテーション課題では正常でした。

 

〔選択的な身体表象障害の調査〕

 次に患者群とコントロール群との比較を行なったところ、患者群の各評価は有意にスコアが低かった。興味深いことに主成分分析と同様に、各評価それぞれの独立した障害を示唆する症例が抽出できた。(Table 2


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〔身体表象障害と脳損傷部位〕

 Body image障害(15/16)とbody structural description障害(16/18)は有意に左半球の損傷で多くみられた。

 手のメンタルローテーション障害(10/17)と運動イメージ障害(7/9)は左右半球の側性化は認められなかったが左半球優位であった。

 身体表象の障害をもつ患者には、DLF(前頭葉背側)と頭頂葉に障害のある患者が有意に多かった。また身体イメージの障害を示す患者のうち12/13に側頭葉の損傷があった。同じようにbody structural descriptionに障害のある患者のうち12/15で側頭葉に損傷があった。Body structural description障害の患者は頭頂葉の損傷よりも側頭葉に問題がある確率が高かった(12/15 vs 6/15)。

 

 身体図式は、DLFや後部頭頂葉に依存しているという仮説を支持する結果となった。手のメンタルローテーション課題に問題があった患者12名のうち、すべての症例がDLF皮質(5名)、頭頂葉皮質(4名)、両方(3名)に損傷があった。運動イメージ/運動実行課題に問題のあった患者6名も頭頂葉(2名)またはDLF4名)に損傷が認められた。

 

 また、Table 2に示した独立した障害を呈する患者について共通する損傷部位を抽出したところ、身体イメージ障害の3名は、側頭葉のBrodmann area 37を含む領域、運動イメージ障害は左半球のBrodmann area 40の下方部分を含む領域、手のメンタルローテーション障害はBrodmann area 40や右の一次体性感覚野を含む領域であった。

 

 

以上が、Schwoebel & Coslett(2005)の論文の内容です。

 

   私個人的には、ここで使われているBody structural descriptionは一般的に言われる身体イメージに近いのかなと考えています。身体イメージが自己身体の視覚的なイメージであるとするならその身体構造の位置関係も視覚的なイメージを基盤に考えて答えるものであるからです。

 

  そしてこの論文中で使っている「身体イメージ」は言語的な表現や身体の意味・知識をさすものとして使われているように思います。

 

身体表象を3つに分類するのはいいと思いますが、個人的には

①体性感覚を基盤とする“身体図式”

②視覚などの外受容感覚を基盤とする“身体イメージ”

③身体の意味や言語、態度などを表すもの.身体態度?身体知識?

 

がわかりやすいのではないかと考えます。

 

  皆さんはどうでしょうか?

 

Schwoebel, & Coslett (2005). Evidence for Multiple, Distinct Representations of the Human Body. Journal of Cognitive Neuroscience,17(4):543-553.  PDF

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